“思うこと”大長山登山に参加して(10月12日) 
                           仲 裕輔(平成17年卒) 記



 視界がはっきりしない悪天候、救出されるのはいつだろうという不安、寒い雪洞生活、消耗される体力、そして我々のために動いてくださった捜索隊、勝山市の方々、OB・OGの方々、学院関係、そして現地まで赴いてくれた家族への感謝と反省。今でも当時のことははっきりと覚えている。

 しかし、当事者が卒業して日がたつに連れて、その記憶はKGWVでは風化されていく。あの遭難事故は絶対に風化させてはいけない事故であり、また当時お世話になった方々への感謝と反省の意も忘れてはいけないものである。

 今回の登山は、今一度現役とOBが一体となり、改めて安全登山と周囲の方々への感謝の意を確認するにはよい企画であり、当時お世話になった方々へ改めて感謝の意を示すことと現役に当時の経験を伝えることができればと思って参加させていただいた。

 当時とは打って変わって、絶好の秋晴れの中、卒業後初めて現地を訪れた。無雪期と冬季では地形も難易度も変わり、周囲の山々がはっきりと見渡すことができ、登山者も多く、行楽要素を含んだハイキングを楽しむことができた。 しかし、遭難地点だけは季節が変われど、年月が経てど地形と場所が変わることなく静かに我々を迎えてくれた。遭難地点を訪れると、不意に当時の記憶がよみがえる。今回の目的は「遭難を振り返り、現役諸君に当時の状況を知ってもらうことで、安全登山を実践してもらう」ことであった。当事者であり、身をもって体験したからこそ、生で伝えられることがあると考え、当時のことをできるだけ克明に思い出し、実際に現場でリアルに現役に伝えることで安全登山の重要性と、周囲の方々への感謝の気持ちを忘れないでほしいということを伝えた。実際には言葉では表しにくい経験もあり、克明に伝えることは難しかったが、現役は真剣に自分のことのように聞いてくれた。また、真剣に聞く現役の表情を見て、現役の安全登山への拘りを垣間見ることができて、私としては嬉しく思った。

 単に安全登山を語るなら机上の話でも事足りるであろうし、わざわざ現地に行く必要もない。しかしそれでは臨場感はなく現役には伝わらなかったであろう。当事者と現役さらに当時お世話になった勝山市の方々や、OB・OGも一緒に行くことで部全体で安全登山について意見を交わして自分のこととして捉える中であれだけの事故も教訓として生かされると感じた。また、当時お世話になった方々へ改めて反省の意を伝えると共に、社会人になって頑張っている姿、成長した姿をお見せすることができたことも今回のよかった点である。 

 ワンダーフォーゲル部は自然をフィールドにしている以上、危険と常に背中合わせである。しかし、それに対して極度に恐れたり、また実力を過信したりするのではなく、できるだけの対策を立てて上手く付き合うことができてこそ初めて楽しく山行ができるものである。今回の山行を生かして現役諸君にはより一層安全にこだわった活動を行っていただきたい。また、山へ行くことができるのは自分たちパーティの力だけでなく、その背後にはOB・OGはじめ多く方々のバックアップがあってこそという、謙虚な気持ちと感謝の気持ちを常に持ち続けてほしい。そして次の代、また次の代へと語り継いでいただきたい。 私自身も今回の山行を通じて、多くの方々からのご支援があったからこそ無事に帰ってくることができたと実感できた。

 最後になりましたが、当時ご多忙にもかかわらず救出のために尽力下さった皆さんには改めて感謝と謝罪の意を表させていただきます。また、私も今後はOBの立場でワンダーフォーゲル部を支えていき、当時の恩返しをさせていただきます。

                                                       以上


(注) 仲 裕輔君は大長山合宿に参加した6名の最上級生(3回生)の中の1人であります。